高校数学で,「相加平均と相乗平均の大小関係」というものを学習します.その意味や使い方を学習した後は,それをいつ使うべきか把握しておきたいものです.
相加平均と相乗平均(相加相乗平均)の大小関係は,不等式の証明や,関数の最大値・最小値を求める問題でよく利用します.この記事では,相加平均と相乗平均の大小関係を利用するコツを紹介し,実際にそれを利用する問題をまとめます.
相加相乗平均の大小関係とは
$a\gt0$,$b\gt0$のとき
$\frac{a+b}{2}\geqq\sqrt{ab}$
等号が成り立つのは,$a=b$のときである.
$\frac{a+b}{2}\geqq\sqrt{ab}$
等号が成り立つのは,$a=b$のときである.
これが相加平均と相乗平均の大小関係です.
ほとんどの問題で,この不等式は$a+b\geqq2\sqrt{ab}$の形で使います.
そもそも「相加平均」,「相乗平均」が何なのか確認したいという方は下記を参照してください.
相加平均,相乗平均(相加相乗平均)とは
利用のコツ
相加平均と相乗平均の大小関係が利用できるかどうかの判断基準は,
「2つ文字式(どちらも正)が和で表されており,それらの積が定数になるとき」
です.
例えば次のような式に利用できます.
・$a+\frac{1}{a}\quad ※a\cdot\frac{1}{a}=1$
・$8b+\frac{1}{2b}\quad ※8b\cdot\frac{1}{2b}=4$
・$\frac{b}{a}+\frac{9a}{b}\quad ※\frac{b}{a}\cdot\frac{9a}{b}=9$
・$2^{x}+2^{-x}\quad ※2^{x}\cdot2^{-x}=1$
例題と解説
不等式の証明での利用
例1 $a\gt 0$のとき,不等式$2a+\frac{2}{a}\geqq 4$を証明せよ.
また,等号が成り立つときを調べよ.
また,等号が成り立つときを調べよ.
$a\gt 0$より,$2a\gt 0$,$\frac{2}{a}\gt 0$であるので, (和で表された2つの文字式がどちらも正であることを確認します.)
相加平均と相乗平均の大小関係より,
$\style{color: red;}{2a+\frac{2}{a}\geqq 2\sqrt{2a\cdot\frac{2}{a}}}=4$
また,等号が成り立つのは,
$\begin{eqnarray*} 2a&=&\frac{2}{a}\\ a^{2}&=&1 \end{eqnarray*}$
$a\gt 0$より
$a=1$
よって,等号が成り立つのは,$a=1$のときである.
最大値・最小値を求める問題での利用
例2 $a\gt 0$,$b\gt 0$のとき,
$(a+\frac{1}{b})(b+\frac{9}{a})$の最小値を求めよ.
$(a+\frac{1}{b})(b+\frac{9}{a})$の最小値を求めよ.
$(a+\frac{1}{b})(b+\frac{9}{a})$を展開すると,
$\begin{eqnarray*} (a+\frac{1}{b})(b+\frac{9}{a})&=&ab+9+1+\frac{9}{ab}\\ &=&ab+\frac{9}{ab}+10 \end{eqnarray*}$
(展開後の式中の$ab+\frac{9}{ab}$に相加平均と相乗平均の大小関係を適用します.)
$a\gt 0$,$b\gt 0$より,$ab\gt 0$,$\frac{9}{ab}\gt 0$であるので, (例1と同様,和で表された2つの文字式がどちらも正であることを確認します.)
相加平均と相乗平均の大小関係より,
$\begin{eqnarray*} \style{color: red;}{ab+\frac{9}{ab}}&\style{color: red;}{\geqq}&\style{color: red;}{2\sqrt{ab\cdot\frac{9}{ab}}}\\ &=&6 \end{eqnarray*}$
両辺に$10$を加えて,
$ab+\frac{9}{ab}+10\geqq 16$
等号が成り立つのは,
$\begin{eqnarray*} ab&=&\frac{9}{ab}\\ (ab)^2&=&9 \end{eqnarray*}$
$ab\gt 0$であるので
$ab=3$
よって,等号が成り立つのは,$ab=3$のときである.
(このように,等号が成り立つ$a$,$b$の値が存在することを必ず確認します.これは,この問題において本当にその最小値をとりうることを示すためです.)
したがって,最小値$16$($ab=3$のとき)
指数関数での利用
例3 $y=9^{x}+9^{-x}-2(3^{x}+3^{-x})+8$の最小値とそのときの$x$の値を求めよ.
$3^{x}+3^{-x}=t$とおく.
(ここから,$y$を$t$の関数として考えていきます.$3^{x}+3^{-x}$に相加平均と相乗平均の大小関係を適用することで,$t$の定義域を求めます.)
$3^{x}\gt 0$,$3^{-x}\gt 0$であるので,相加平均と相乗平均の大小関係より,
$\begin{eqnarray*} t=\style{color: red;}{3^{x}+3^{-x}}&\style{color: red;}{\geqq}& \style{color: red;}{2\sqrt{3^{x}\cdot 3^{-x}}}\\ &=&2\sqrt{3^{x-x}}\\ &=&2\sqrt{3^{0}}\\ &=&2 \end{eqnarray*}$
等号が成り立つのは,
$\begin{eqnarray*} 3^{x}&=&3^{-x}\\ x&=&-x\\ x&=&0 \end{eqnarray*}$
よって,等号が成り立つのは,$x=0$のときである.
また,
$\begin{eqnarray*} 9^{x}+9^{-x}&=&(3^{x}+3^{-x})^{2}-2\cdot 3^{x}\cdot 3^{-x}\\ &=&t^{2}-2 \end{eqnarray*}$
よって,
$\begin{eqnarray*} y&=&9^{x}+9^{-x}-2(3^{x}+3^{-x})+8\\ &=&t^{2}-2-2t+8\\ &=&t^{2}-2t+6\\ &=&(t-1)^{2}+5 \end{eqnarray*}$
$t\geqq 2$より,$t=2$のとき,最小値$5$
$t=2$のとき,$3^{x}+3^{-x}=2$
これは,相加平均と相乗平均の大小関係において等号が成り立つときなので,$x=0$
したがって,
$x=0$のとき,最小値$5$