組立除法や筆算は時間がかかる
$x^3+5x^2+11x-6$ のような3次以上の多項式を高次式といいます.高次式の因数分解は,高次方程式や高次不等式を解く際に行う計算です.
因数定理が使える場合,高次式を因数分解するためには,まず因数定理を用いて因数を一つ見つけた後,組立除法か多項式の筆算を用いるのが一般的です.
しかし,組立除法や多項式の筆算は複雑で時間がかかってしまいます.
この記事では,組立除法や筆算を使わずに,高次式を簡単に速く因数分解する方法を,例題を使って紹介します.
例題と解説
3次式の因数分解
例1 $P(x)=x^3-6x^2+11x-6$を因数分解せよ.
$P(1)=1-6+11-6=0$ より, $P(x)$ は $x-1$ を因数にもつので,
$P(x)=(x-1)(ax^2+bx+c)$
という形に因数分解されることがわかります.
ここで,係数 $a,b,c$ を求めるために,一般には組立除法または $(x^3-6x^2+11x-6)\div(x-1)$ の筆算を行いますが,これらの手法を使わずに求めていきます.
求め方は単純で, $(x-1)(ax^2+bx+c)$ を展開したときに $x^3-6x^2+11x-6$ となるように係数 $a,b,c$ を定めるというものです.
まず, $a$ と $c$ はすぐに求めることができます.
展開後の $x^3$ の係数が $1$ となるためには, $a=1$ でなければならないことは明らかです.
また,展開後の定数項が $-6$ となるためには, $c=6$ でなければならないことも明らかです.
展開後の $x^3$ の係数が $1$ となるためには, $a=1$ でなければならないことは明らかです.
また,展開後の定数項が $-6$ となるためには, $c=6$ でなければならないことも明らかです.
よって,
$x^3-6x^2+11x-6=(x-1)(x^2+bx+6)$
となります.
次に, $b$ を求めるために,展開後の $x^2$ の係数に着目します.
展開後の $x^2$ の係数が $-6$ となるためには, $bx^2-x^2=-6x^2$ でなければなりません.
よって, $b=-5$ であることがわかります.
展開後の $x^2$ の係数が $-6$ となるためには, $bx^2-x^2=-6x^2$ でなければなりません.
よって, $b=-5$ であることがわかります.
もちろん,展開後の $x$ の係数に着目しても $b$ を求めることができます.
展開後の $x$ の係数が $11$ となるためには, $6x-bx=11x$ でなければなりません.
よって, $b=-5$ であることがわかります.
展開後の $x$ の係数が $11$ となるためには, $6x-bx=11x$ でなければなりません.
よって, $b=-5$ であることがわかります.
したがって,
$\begin{eqnarray*}P(x)&=&x^3-6x^2+11x-6\\&=&(x-1)(x^2-5x+6)\\&=&(x-1)(x-2)(x-3)\end{eqnarray*}$
実際に計算するときは, $a,b,c$ というように係数を文字でおく必要はなく,暗算でできると思います.
例2 $P(x)=2x^3-4x^2-3x+6$を因数分解せよ.
$P(2)=16-16-6+6=0$ より, $P(x)$ は $x-2$ を因数にもつので,
$P(x)=(x-2)(ax^2+bx+c)$
という形に因数分解されることがわかります.
例1と同様に, $(x-2)(ax^2+bx+c)$ を展開したときに $2x^3-4x^2-3x+6$ となるように係数 $a,b,c$ を定めます.
まず, $a$ と $c$ を求めます.
展開後の $x^3$ の係数が $2$ となるためには, $a=2$ でなければならないことは明らかです.
また,展開後の定数項が $6$ となるためには, $c=-3$ でなければならないことも明らかです.
展開後の $x^3$ の係数が $2$ となるためには, $a=2$ でなければならないことは明らかです.
また,展開後の定数項が $6$ となるためには, $c=-3$ でなければならないことも明らかです.
よって,
$2x^3-4x^2-3x+6=(x-2)(2x^2+bx-3)$
となります.
次に, $b$ を求めるために,展開後の $x^2$ の係数に着目します.
展開後の $x^2$ の係数が $-4$ となるためには, $bx^2-4x^2=-4x^2$ でなければなりません.
よって, $b=0$ であることがわかります.
展開後の $x^2$ の係数が $-4$ となるためには, $bx^2-4x^2=-4x^2$ でなければなりません.
よって, $b=0$ であることがわかります.
したがって,
$\begin{eqnarray*}P(x)&=&2x^3-4x^2-3x+6\\&=&(x-2)(2x^2-3)\end{eqnarray*}$
4次式の因数分解
例3 $P(x)=x^4-10x^3+35x^2-50x+24$を因数分解せよ.
$P(1)=1-10+35-50+24=0$ より, $P(x)$ は $x-1$ を因数にもつので,
$P(x)=(x-1)(ax^3+bx^2+cx+d)$
という形に因数分解されることがわかります.
これまでの例題と同様に, $(x-1)(ax^3+bx^2+cx+d)$ を展開したときに $x^4-10x^3+35x^2-50x+24$ となるように係数 $a,b,c,d$ を定めます.
まず, $a$ と $d$ を求めます.
展開後の $x^4$ の係数が $1$ となるためには, $a=1$ でなければならないことは明らかです.
また,展開後の定数項が $24$ となるためには, $d=-24$ でなければならないことも明らかです.
展開後の $x^4$ の係数が $1$ となるためには, $a=1$ でなければならないことは明らかです.
また,展開後の定数項が $24$ となるためには, $d=-24$ でなければならないことも明らかです.
よって,
$x^4-10x^3+35x^2-50x+24=(x-1)(x^3+bx^2+cx-24)$
となります.
次に, $b$ を求めるために,展開後の $x^3$ の係数に着目します.
展開後の $x^3$ の係数が $-10$ となるためには, $bx^3-x^3=-10x^2$ でなければなりません.
よって, $b=-9$ であることがわかります.
展開後の $x^3$ の係数が $-10$ となるためには, $bx^3-x^3=-10x^2$ でなければなりません.
よって, $b=-9$ であることがわかります.
また, $c$ を求めるために,展開後の $x$ の係数に着目します.
展開後の $x$ の係数が $-50$ となるためには, $-24x-cx=-50x$ でなければなりません.
よって, $c=26$ であることがわかります.
展開後の $x$ の係数が $-50$ となるためには, $-24x-cx=-50x$ でなければなりません.
よって, $c=26$ であることがわかります.
したがって,
$\begin{eqnarray*}P(x)&=&x^4-10x^3+35x^2-50x+24\\&=&(x-1)(x^3-9x^2+26x-24)\end{eqnarray*}$
さらに, $Q(x)=x^3-9x^2+26x-24$ とおくと,
$Q(2)=8-36+52-24=0$ より, $Q(x)$ は $x-2$ を因数にもつので,
$Q(2)=8-36+52-24=0$ より, $Q(x)$ は $x-2$ を因数にもつので,
$Q(x)=(x-2)(ex^2+fx+g)$
という形に因数分解されることがわかります.
同様に, $(x-2)(ex^2+fx+g)$ を展開したときに $x^3-9x^2+26x-24$ となるように係数 $e,f,g$ を定めます.
まず, $e$ と $g$ を求めます.
展開後の $x^3$ の係数が $1$ となるためには, $e=1$ でなければならないことは明らかです.
また,展開後の定数項が $-24$ となるためには, $g=12$ でなければならないことも明らかです.
展開後の $x^3$ の係数が $1$ となるためには, $e=1$ でなければならないことは明らかです.
また,展開後の定数項が $-24$ となるためには, $g=12$ でなければならないことも明らかです.
よって,
$x^3-9x^2+26x-24=(x-2)(x^2+fx+12)$
となります.
次に, $f$ を求めるために,展開後の $x^2$ の係数に着目します.
展開後の $x^2$ の係数が $-9$ となるためには, $fx^2-2x^2=-9x^2$ でなければなりません.
よって, $f=-7$ であることがわかります.
展開後の $x^2$ の係数が $-9$ となるためには, $fx^2-2x^2=-9x^2$ でなければなりません.
よって, $f=-7$ であることがわかります.
したがって,
$\begin{eqnarray*}P(x)&=&(x-1)(x^3-9x^2+26x-24)\\&=&(x-1)(x-2)(x^2-7x+12)\\&=&(x-1)(x-2)(x-3)(x-4)\end{eqnarray*}$