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2017/06/27

組立除法を使わずに高次式を因数分解する方法



組立除法や筆算は時間がかかる


x^3+5x^2+11x-6 のような3次以上の多項式を高次式といいます.高次式の因数分解は,高次方程式や高次不等式を解く際に行う計算です.

因数定理が使える場合,高次式を因数分解するためには,まず因数定理を用いて因数を一つ見つけた後,組立除法か多項式の筆算を用いるのが一般的です.
 
しかし,組立除法や多項式の筆算は複雑で時間がかかってしまいます.

この記事では,組立除法や筆算を使わずに,高次式を簡単に速く因数分解する方法を,例題を使って紹介します.





例題と解説


3次式の因数分解


例1 P(x)=x^3-6x^2+11x-6を因数分解せよ.

P(1)=1-6+11-6=0 より, P(x)x-1 を因数にもつので,

P(x)=(x-1)(ax^2+bx+c)

という形に因数分解されることがわかります.

ここで,係数 a,b,c を求めるために,一般には組立除法または (x^3-6x^2+11x-6)\div(x-1) の筆算を行いますが,これらの手法を使わずに求めていきます.

求め方は単純で, (x-1)(ax^2+bx+c) を展開したときに x^3-6x^2+11x-6 となるように係数 a,b,c を定めるというものです.

まず, ac はすぐに求めることができます.
展開後の x^3 の係数が 1 となるためには, a=1 でなければならないことは明らかです.
また,展開後の定数項が -6 となるためには, c=6 でなければならないことも明らかです.

よって,

x^3-6x^2+11x-6=(x-1)(x^2+bx+6)

となります.

次に, b を求めるために,展開後の x^2 の係数に着目します.
展開後の x^2 の係数が -6 となるためには, bx^2-x^2=-6x^2 でなければなりません.
よって, b=-5 であることがわかります.

もちろん,展開後の x の係数に着目しても b を求めることができます.
展開後の x の係数が 11 となるためには, 6x-bx=11x でなければなりません.
よって, b=-5 であることがわかります.

したがって,

\begin{eqnarray*}P(x)&=&x^3-6x^2+11x-6\\&=&(x-1)(x^2-5x+6)\\&=&(x-1)(x-2)(x-3)\end{eqnarray*}

実際に計算するときは, a,b,c というように係数を文字でおく必要はなく,暗算でできると思います.



例2 P(x)=2x^3-4x^2-3x+6を因数分解せよ.

P(2)=16-16-6+6=0 より, P(x)x-2 を因数にもつので,

P(x)=(x-2)(ax^2+bx+c)

という形に因数分解されることがわかります.

例1と同様に, (x-2)(ax^2+bx+c) を展開したときに 2x^3-4x^2-3x+6 となるように係数 a,b,c を定めます

まず, ac を求めます.
展開後の x^3 の係数が 2 となるためには, a=2 でなければならないことは明らかです.
また,展開後の定数項が 6 となるためには, c=-3 でなければならないことも明らかです.

よって,

2x^3-4x^2-3x+6=(x-2)(2x^2+bx-3)

となります.

次に, b を求めるために,展開後の x^2 の係数に着目します.
展開後の x^2 の係数が -4 となるためには, bx^2-4x^2=-4x^2 でなければなりません.
よって, b=0 であることがわかります.

したがって,

\begin{eqnarray*}P(x)&=&2x^3-4x^2-3x+6\\&=&(x-2)(2x^2-3)\end{eqnarray*}



4次式の因数分解


例3 P(x)=x^4-10x^3+35x^2-50x+24を因数分解せよ.

P(1)=1-10+35-50+24=0 より, P(x)x-1 を因数にもつので,

P(x)=(x-1)(ax^3+bx^2+cx+d)

という形に因数分解されることがわかります.

これまでの例題と同様に, (x-1)(ax^3+bx^2+cx+d) を展開したときに x^4-10x^3+35x^2-50x+24 となるように係数 a,b,c,d を定めます

まず, ad を求めます.
展開後の x^4 の係数が 1 となるためには, a=1 でなければならないことは明らかです.
また,展開後の定数項が 24 となるためには, d=-24 でなければならないことも明らかです.

よって,

x^4-10x^3+35x^2-50x+24=(x-1)(x^3+bx^2+cx-24)

となります.

次に, b を求めるために,展開後の x^3 の係数に着目します.
展開後の x^3 の係数が -10 となるためには, bx^3-x^3=-10x^2 でなければなりません.
よって, b=-9 であることがわかります.

また, c を求めるために,展開後の x の係数に着目します.
展開後の x の係数が -50 となるためには, -24x-cx=-50x でなければなりません.
よって, c=26 であることがわかります.

したがって,

\begin{eqnarray*}P(x)&=&x^4-10x^3+35x^2-50x+24\\&=&(x-1)(x^3-9x^2+26x-24)\end{eqnarray*}

さらに, Q(x)=x^3-9x^2+26x-24 とおくと,
Q(2)=8-36+52-24=0 より, Q(x)x-2 を因数にもつので,

Q(x)=(x-2)(ex^2+fx+g)

という形に因数分解されることがわかります.

同様に, (x-2)(ex^2+fx+g) を展開したときに x^3-9x^2+26x-24 となるように係数 e,f,g を定めます

まず, eg を求めます.
展開後の x^3 の係数が 1 となるためには, e=1 でなければならないことは明らかです.
また,展開後の定数項が -24 となるためには, g=12 でなければならないことも明らかです.

よって,

x^3-9x^2+26x-24=(x-2)(x^2+fx+12)

となります.

次に, f を求めるために,展開後の x^2 の係数に着目します.
展開後の x^2 の係数が -9 となるためには, fx^2-2x^2=-9x^2 でなければなりません.
よって, f=-7 であることがわかります.

したがって,

\begin{eqnarray*}P(x)&=&(x-1)(x^3-9x^2+26x-24)\\&=&(x-1)(x-2)(x^2-7x+12)\\&=&(x-1)(x-2)(x-3)(x-4)\end{eqnarray*}