対数関数を含む不等式は,対数の性質や底の変換公式を利用して解きます.また,解を求める際に,真数条件や底の条件を確認する必要があります.
方程式と違い,不等式を解くときは,底の大きさが$1$より大きいか小さいかで計算が異なるので,注意が必要です.
ここでは,いろいろな対数関数を含む不等式の解き方を解説します.
対数(log)の性質と底の変換公式
対数の性質
$M \gt 0$,$N \gt 0$で,$k$を実数とする.
$1$ $\log_{a}MN = \log_{a}M + \log_{a}N$
$2$ $\log_{a}\frac{M}{N} = \log_{a}M - \log_{a}N$
$3$ $\log_{a}M^k = k\log_{a}M$
$4$ $\log_{a}1 = 0$, $\log_{a}a=1$
$M \gt 0$,$N \gt 0$で,$k$を実数とする.
$1$ $\log_{a}MN = \log_{a}M + \log_{a}N$
$2$ $\log_{a}\frac{M}{N} = \log_{a}M - \log_{a}N$
$3$ $\log_{a}M^k = k\log_{a}M$
$4$ $\log_{a}1 = 0$, $\log_{a}a=1$
対数の計算で特に間違えやすいのが,
$\log_{a}M + \log_{a}N = \log_{a}(M+N)$
としてしまうことです.
このように,$\log_{a}$でくくるというような計算はできません.
底の変換公式
$a$,$b$,$c$は正の数で,$a\neq 1$,$c\neq 1$とするとき
$\log_{a}b = \frac{\log_{c}b}{\log_{c}a}$
$a$,$b$,$c$は正の数で,$a\neq 1$,$c\neq 1$とするとき
$\log_{a}b = \frac{\log_{c}b}{\log_{c}a}$
底の変換公式を使えば,対数を,任意の底を使って表現することができます.
真数条件と底の条件
対数 $\log_{a}M$ について
真数条件
$M \gt 0$
底の条件
$a \gt 0$,$a \neq 1$
(もしくは$0 \lt a \lt 1$,$1 \lt a$)
真数条件
$M \gt 0$
底の条件
$a \gt 0$,$a \neq 1$
(もしくは$0 \lt a \lt 1$,$1 \lt a$)
真数条件は,真数は正とするというものです.
底の条件は,底は$1$以外の正の数とするというものです.
$0 \lt a \lt 1$,$1 \lt a$
この形のほうが,不等式の計算がしやすいと思います.
例題と計算方法の解説
次の不等式を解け.
$(1)$ $\log_{2}{x} \leqq 3$
$(2)$ $\log_{\frac{1}{3}}x \gt 2$
$(3)$ $\log_{\frac{1}{2}}(x-1) \gt \log_{2}(x+1)$
$(4)$ $(\log_{\frac{1}{2}}x)^2 - \log_{\frac{1}{2}}x - 2 \gt 0$
$(5)$ $\log_{a}(x-1) \gt \log_{a}(3x+5)$
$(1)$ $\log_{2}{x} \leqq 3$
$(2)$ $\log_{\frac{1}{3}}x \gt 2$
$(3)$ $\log_{\frac{1}{2}}(x-1) \gt \log_{2}(x+1)$
$(4)$ $(\log_{\frac{1}{2}}x)^2 - \log_{\frac{1}{2}}x - 2 \gt 0$
$(5)$ $\log_{a}(x-1) \gt \log_{a}(3x+5)$
$(1)$ $\log_{2}{x} \leqq 3$
真数条件より,
$x \gt 0 \quad \cdots ①$
右辺の $3$ を,左辺と同様の $2$ を底とする対数 $\log_{2}2^3$ にして解きます.
$\log_{2}{x} \leqq \log_{2}2^3\\ x \leqq 2^3\\ x \leqq 8 \quad \cdots ②$
(底 $2$ が $1$ より大きいので,不等号の向きは変わりません.)
①,②より,
$0 \lt x \leqq 8$
$(2)$ $\log_{\frac{1}{3}}x \gt 2$
真数条件より,
$x \gt 0 \quad \cdots ①$
右辺の $2$ を,左辺と同様の $\frac{1}{3}$ を底とする対数 $\log_{\frac{1}{3}}(\frac{1}{3})^2$ にして解きます.
$\log_{\frac{1}{3}}x \gt \log_{\frac{1}{3}}(\frac{1}{3})^2\\ x \style{color: red;}{\lt} (\frac{1}{3})^2\\ x \lt \frac{1}{9} \quad \cdots ②$
(底 $\frac{1}{3}$ が $1$ より小さいので,不等号の向きが変わります.)
①,②より,
$0 \lt x \lt \frac{1}{9}$
$(3)$ $\log_{\frac{1}{2}}(x-1) \gt \log_{2}(x+1)$
真数条件より,
$x-1 \gt 0$ かつ $x+1 \gt 0$
$x \gt 1$ かつ $x \gt -1$
すなわち,
$x \gt 1 \quad \cdots ①$
左辺の $\log_{\frac{1}{2}}(x-1)$ に底の変換公式を適用して,右辺と同様の $2$ を底とする対数にします.
$\frac{\log_{\style{color: red;}{2}}(x-1)}{\log_{\style{color: red;}{2}}\frac{1}{2}} \gt \log_{\style{color: red;}{2}}(x+1)\\ \frac{\log_{2}(x-1)}{\log_{2}2^{-1}} \gt \log_{2}(x+1)\\ -\log_{2}(x-1) \gt \log_{2}(x+1)\\ \log_{2}(x+1) + \log_{2}(x-1) \lt 0$
左辺に,対数の性質
$\log_{a}MN = \log_{a}M + \log_{a}N$
を使うと,
$\log_{2}(x+1)(x-1) \lt 0\\ \log_{2}(x+1)(x-1) \lt \log_{2}1\\ (x+1)(x-1) \lt 1$
(底 $2$ が $1$ より大きいので,不等号の向きは変わりません.)
$x^2 - 1 \lt 1\\ x^2 - 2 \lt 0\\ (x + \sqrt{2})(x - \sqrt{2}) \lt 0\\ -\sqrt{2} \lt x \lt \sqrt{2} \quad \cdots ②$
①,②より,
$1 \lt x \lt \sqrt{2}$
$(4)$ $(\log_{\frac{1}{2}}x)^2 - \log_{\frac{1}{2}}x - 2 \gt 0$
真数条件より,
$x \gt 0 \quad \cdots ①$
この不等式は, $\log_{\frac{1}{2}}x$ に関する2次不等式と見ることができます.
$(\style{color: red;}{\log_{\frac{1}{2}}x})^2 - \style{color: red;}{\log_{\frac{1}{2}}x} - 2 \gt 0\\ (\style{color: red;}{\log_{\frac{1}{2}}x} + 1)(\style{color: red;}{\log_{\frac{1}{2}}x} - 2) \gt 0\\ \style{color: red;}{\log_{\frac{1}{2}}x} \lt -1,\ 2 \lt \style{color: red;}{\log_{\frac{1}{2}}x}$
$\log_{\frac{1}{2}}x \lt -1$ のとき,
$\log_{\frac{1}{2}}x \lt \log_{\frac{1}{2}}(\frac{1}{2})^{-1}\\ x \style{color: red;}{\gt} (\frac{1}{2})^{-1}$
(底 $\frac{1}{2}$ が $1$ より小さいので,不等号の向きが変わります.)
$x \gt 2$
$2 \lt \log_{\frac{1}{2}}x$ のとき,
$\log_{\frac{1}{2}}(\frac{1}{2})^2 \lt \log_{\frac{1}{2}}x\\ (\frac{1}{2})^2 \style{color: red;}{\gt} x$
(底 $\frac{1}{2}$ が $1$ より小さいので,不等号の向きが変わります.)
$\frac{1}{4} \gt x$
よって,
$x \lt \frac{1}{4},\ 2 \lt x \quad \cdots ②$
①,②より,
$0 \lt x \lt \frac{1}{4},\ 2 \lt x$
$(5)$ $\log_{a}(x-1) \gt \log_{a}(3x+5)$
真数条件より,
$x-1 \gt 0$ かつ $3x+5 \gt 0$
$x \gt 1$ かつ $x \gt -\frac{5}{3}$
すなわち,
$x \gt 1 \quad \cdots ①$
この不等式は,対数の底が $a$ という文字になっています.
この問題では,$a$ の値に制限がないので,底の条件を満たすすべての値に対して解かなければなりません.
$0 \lt a \lt 1$ のときは不等号の向きが変わり,
$a \gt 1$ のときは不等号の向きは変わりません.
これら2つの場合で計算が異なるので,場合分けをします.
$0 \lt a \lt 1$ のとき
$\log_{a}(x-1) \gt \log_{a}(3x+5)\\ x-1 \style{color: red;}{\lt} 3x+5\\ 2x \gt -6\\ x \gt -3 \quad \cdots ②$
①,②より,
$x \gt 1$
$a \gt 1$ のとき,
$\log_{a}(x-1) \gt \log_{a}(3x+5)\\ x-1 \gt 3x+5\\ 2x \lt -6\\ x \lt -3 \quad \cdots ③$
①,③より,
解なし
よって,
$0 \lt a \lt 1$ のとき, $x \gt 1$
$a \gt 1$ のとき, 解なし